男子の方でも、竹居とちょっと話せばそのくらいはわかるらしく、最初遠巻きに見られていた竹居も、数日たてば、男子の輪の中心にいるくらいのポジションになっていた。催情剤
 口は悪いけど、縁側でひなたぼっこしてるおじいちゃん並に温厚で、面倒見がよくて、気配りもできて、頭がいい。
 それが私の竹居に対する評価だったから、いきなり起こった出来事に、私は凍り付いた。

 入学式から一週間くらいたった、昼休みの教室。グラウンド側の窓を背に、私は仲良くなった女の子たちと話しながらお弁当をつついていた。
 食べ始めて五分たったかどうか、ぐらいだろうか。
 廊下側で男子に囲まれて昼食をとっていた竹居が、ひとり、ゆらりと立ち上がった。
 竹居は体が大きくて目立つから、立ち上がったのに気づいた。食べるの早いな、なんてのんきに思いながら、視界に収めていた。
 そしたら、そこから先はまるでスローモーションのようだった。
 竹居は男子の輪から抜け出て、教室の真ん中にあった椅子の背に手をかけた。椅子の脚を両手に持った。振りかぶった。私はあっけにとられて、竹居が椅子を頭上高く持ち上げた異様な姿を見ていた。
 なんかヤバイ。ちょっとあんた。とっさに声をかけようとした。
 けれどその声は間に合わず、竹居は思い切り、椅子を廊下の窓に投げつけた。
 廊下側の窓は開け放しにされていた。竹居に投げられた椅子は、重なった二枚のガラス窓を両方ともぶち破った。ガラスの割れる高い音がして、ガラスの落ちる音がして、それから、廊下の壁に当たった椅子がバウンドする音がした。
 教室はシンと静まりかえった。
 竹居とお弁当を食べていた男子たちが唖然として、それから、ひっと息をのんだ。
 女子が遅れて小さく悲鳴をあげた。けれど、竹居の矛先がこちらに向くのを恐れるように、その悲鳴もすぐに止んだ。
 教室は静かだった。催情剤
 竹居は教室の真ん中にひとりで立っていた。
 おそらくはその行動の原因となった男子たちに、それ以上つかみかかるわけでもなく、ただただ、立っていた。
レジーナは授業を終え、久しぶりに自分の宿舎へ変える途中。アフリカ超人
考え事をしながら歩いていた所為だろう。道の真ん中で鞄を落としてしまい、辺りに教科書や紙が散乱してしまった。

運の悪いことに今日は風が強く、軽い紙類は簡単に飛ばされて行く。
そのひとつひとつを追いかける気力もなくレジーナが項垂れていた時。

風下の方で、飛んで行った紙を拾ってくれる男性が現れた。

「はい、どうぞ」

笑顔で差し出した紙を慌てて受け取り鞄へ乱暴に突っ込んだレジーナは、目の前にいる人物を凝視して片眉を顰める。

「???マリウス王子?」

「よくわかったねぇ!」

彼はカラカラと笑って手を叩いた。
わかるもなにも、面立ちがディーンそっくりだ。
ディーンの陽気で活発な雰囲気に儚さを足したような彼は、カーマルゲートの生徒らしからぬ軍服を着ている。アフリカ超人

「あの???、はじめまして、メーデン?コストナーです」

「やっぱり君かぁ!
噂は聞いてるよ、僕はマリウス?イルダ?サイラス。
弟のディーンがいつもお世話になってるね」

「こちらこそ」

レジーナの手を握り握手をする彼は嬉しそうに笑って顔をまじまじと覗き込んだ。

「それにしても、相変わらずディーンの奴はメンクイだよねぇ」
すると廊下で遭遇した人物。正確には人ではなく魔物だった。アフリカ超人

サソリの形をした緑色の身体、黄色い瞳と鋭い瞳孔。身体をくねらせて蠢く巨大な生物――――――カンダランテである。

「マイリース?リトラバー????
なんのつもり?」

メーデンは紫色の目を細めてカンダランテを見据える。

カンダランテに化けたリトラバーは、低くおぞましい声で言い放った。

『コロしてやる???コロして??!!』

振りかざして叩き付けてきた尾。常人ならば潰されるところだが、メーデンはたった一歩横に移動しただけで避ける。
リトラバーは不満気に息を吐いた。

「バレる前に私を消す魂胆かしら???」

リトラバーの返事はない。
もともと失敗作であるカンダランテとの融合体。おそらく理性が殺衝動でかき消されているのだろう。

今の彼にあるのは、ただメーデンを殺したい欲望のみ。

メーデンは心の中で舌打ちをした。
もう少しで彼の正体を公に晒すことができたのに、と。アフリカ超人

しかし悠長なことを考えている場合ではなさそうだ。今の彼の狙いは間違いなくメーデン。

『コロす!』

「ったく!」

再び頭から勢いよく突っ込んできたカンダランテを後ろに飛んで避ける。

ここから逃げて助けを呼ぶべきか、それともここで始末するべきか。
メーデンは攻撃をかわしながらしばらく悩んだ末、後者を選んだ。以前にカンダランテに遭遇した経歴を考えれば、2度もカンダランテを見たことを不審がる人も中にはいるだろう。

迷いのなくなったメーデンの行動は速かった。

素早く身体を変形させるとカンダランテの喉に噛みつく。
長くうねったその身体はまさに蛇の形をしており、白の全身に描かれた金の模様が美しい魔物。

名を“ジュナー”という。
非常に有名で希少な魔物だ。夜狼神
「佐伯先生のあとを継いでもらえませんか」

「なんだと?」

「ですから、ここを引き継いでほしいんです」

「おぬしがいるではないか」

「わたしは家督を継いで、いずれ奉行所に勤める身です。手習い師匠になるわけにはいきません」

「そりゃそうかもしれんが……」

 藤次郎はますます困りはてた。むろん、秘伝白雨ともども、引き受ける気などない。

「まあ、よいではありませんか」

 脇でなりゆきを見守っていた雪野が、おだやかに口を開いた。

「そのようにつぎからつぎへと持ちかけては、秋吉さまがお気の毒ですよ。秋吉さまには秋吉さまのお考えがおありでしょうし、少し待ってさしあげたら」

 庄之助はいますぐ返事を聞きたかったらしく、不服そうだったが、姉の言葉にしぶしぶ頷いた。

「お気になさらないでくださいね」

 別れ際に、雪野が小声で告げた。三人で裏店を出て、両国広小路まで来たときだ。庄之助を先に歩かせ、にぎわう人通りに紛れて、雪野はさりげなく藤次郎の横に並んだ。

「押しつけるつもりはありません。無理なら無理と、きっぱり断ってくださったほうが、庄之助も堀川の小父さまも諦めがつくと思います。あとのことは、わたくしがうまく取りなしておきますから……」

 辞儀をして、きびきびと立ち去る雪野の後ろ姿を見送りながら、藤次郎は太い溜息をついた。

――雪野どのは、おれを買ってはいないようだな。

 煩わしいことは、いっさい引き受けたくなかった。竹光を差している身で今さら剣を握る気になどなれないし、うるさい餓鬼ども相手に手習い師匠など論外だ。

 だが、鼻から藤次郎に期待を寄せていない雪野の態度が、藤次郎の心を思いのほか暗くした。

――面倒なことを押しつけおった。

 死んだ佐伯数馬に、恨み言のひとつも言いたくなるというものだ。

 広小路の芝居小屋から、ぞろぞろと人が出てきた。暮れ始めた弱々しい日の光が、絵看板を白っぽく照らしている。軒を連ねる小屋掛けの上で、色のさめた幟が川風にはためくのを眺めながら、藤次郎は混雑する人の間をくぐり抜け、橋へ向かった。

 長い橋の中ほどまで来た頃には、その小さな追跡者に気づいていた。庄之助を訪ねて福井町へ行ったとき、すれ違いに厳しい視線を投げてよこした梅吉である。

ディカは首を振る。催情水
だけど、その軟膏を見る目はいつものとろんとしたものではなく、まん丸く見開いたものだった。

僕自身は、その薬の効果の方に意識が向いていた。
塗った先から、じわじわと傷口に染み込み、この程度の傷だとすぐに治ってしまいそうだった。傷の表面はすぐに塞がる。

これが“約束薬”か。

「……ディカ?」

僕はディカを見上げ、ぎょっとした。
ディカがポロポロと涙を流し、泣いていたのだ。

「ど、どうしたんだいディカ。やっぱり、痛かったかい?」

僕は、薬にマズい部分があったのではないだろうかと思って、立ち上がり慌てた。
でも傷は治っているし、成功のはず。

ディカはソファから降りると、僕の足をぎゅっと抱き締める。催情水

「……ロ……ヴァイ……」

小さく言葉を発したディカ。
僕はその言葉を聞き逃さなかった。

思わず、彼女の頭を撫でる。ディカの涙を、理解した。

「……そうか、ディカ。……ローヴァイの事を、覚えていてくれたんだな」

僕の足に縋って泣く彼女は、ローヴァイの名を呟いた。
かつて自分を救った魔術師の魔法薬を、僕の“約束薬”から見いだしたのだ。

「凄いな、1200年も前の事なのに」

嬉しい様な、寂しい様な気分だ。

1200年も前の出会いを、ディカは大事に覚えてくれていた。
血を利用する薬だから、僕とローヴァイが血縁であったと言う事を、魔法薬から感じ取ったんだろうか。
それとも単純に、ローヴァイと僕がかぶって見えたんだろうか。

ディカは少しの間、僕を離す事無く静かに泣いていた。

しばらくして、僕はディカをあやす為に台所まで果物を探しに行ったが、その時もディカは、ずっと僕の服を握りしめていた。

丁度葡萄が一房あったので、それをこんな早朝に、二人でつまんだ。

「お……けっこう甘いな。どうだ、美味しいかいディカ」

「……」

ディカは葡萄の実を吸う様にして食べて、口をもぐもぐさせ頷く。そしてまた葡萄の実に手を伸ばしていた。
気に入ってくれた様だ。

静かで、清々しい空気の、とても不思議な時間だった。

まさかと言うか、やはりと言うか、僕は無理をしすぎた様だ。
最近の過労と寝不足のせいで随分まいっていたのか、徹夜で作業した朝方、調剤室から居間へ行く途中の廊下でぶっ倒れ、ベルルに発見された。
その時のベルルの、悲痛な叫び声はよく覚えている。

医者の不摂生などと言うが、誰かの病を救う薬を作ろうと無茶をして、自分が倒れたら元も子もない。


「過労と寝不足、栄養失調など……まあよくある働き過ぎですね」催情丹
「私の足首の鎖を外してくれたのが、旦那様で本当に良かった……。本当に、嬉しいわ」

「………ベルル」

僕は彼女の肩を一度抱きしめ、ゆっくり引き離し、彼女の瞳を見た。
黒髪が額に、頬にくっ付いていて、濡れた小さな唇が、みずみずしい鮮やかなプラムのようである。
この時程、彼女を愛おしいと思った事は無い。

「ベルル……ならば僕らも夫婦として、一つ前に進んでみないかい?」

「……そういう時期なの?」

「そうだな。僕は、そうだと思うんだ」

本来、夫婦に決まった、そのような時期など無い。
ただ、僕らにはあったというだけの話だ。夫婦も色々であるならば。

「ベルル……目をつむってごらん」

「………うん」

ベルルは言われるがまま、目をつむった。
無防備な様子で、何の疑いも無く僕を信じきっている少女。

それが、僕の花嫁である。

「………」

「……ん」

僕はそっと、ベルルの唇に自分の唇を重ねた。
水を弾いた赤く小さな唇は、風呂の熱気のせいか熱く、潤っていた。

そしてゆっくりと離す。

ほんの数秒の事であるが、ベルルはとても驚いた様子で目をパチパチとさせた。
果たして彼女に、これがいったいどういうものか分かっているのだろうか。
 魔法が支配する世界なので、さぞやファンタジックなのだろうと思っていたが、D5原液彼が生前住んでいた国と雰囲気は殆ど変わりが無かった。地面はしっかりと舗装されているし、少し離れた場所には市街地と、ビルらしき物も存在している。ぱっと見て違っている点といえば、電柱が全く存在しないことと、遥か遠方を我が物顔で飛ぶ、竜の群れくらいだった。

「竜……絶対強者か」

 老人の肉体の記憶を掘り返しつつ、彼はそう呟いた、かつての世界では、人間は何十億人も繁殖し、己の星の支配者だった。しかし、この世界の人間はそうではない。竜、魔獣、大海獣、果ては不死者に至るまで、ありとあらゆる脅威に晒されている。そんな高等種族らの機嫌を伺い、生態系の合間を縫いながら、人間はこそこそと生存権を得ているのだ。

 源蔵がそんな事を考えていると、一匹の竜が疾風の如く遥か上空を通過した、圧倒的な高みから下等種族を見下すように、竜は源蔵をちらりと一瞥すると、そのまま人類未踏の原生林へと飛び立った。源蔵は多少の威嚇を籠めて一睨みすると、街の方へと歩みを進めた。
源蔵はありったけの貯金を下ろすと、繁華街の片隅のとある学校へと足を向けた。ここは人間の数少ない武器である魔術を洗き、竜や多種族に対抗するエキスパートを育てる機関、早い話が戦闘用の魔法学校だ。それほど綺麗とは言えない建物の中で、受付嬢が気だるそうに座っていたが、源蔵の姿を確認すると、慌てて前へと向き直った。

「この学校へ編入したいんだが」
「はい。では、お孫さんのお名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」

 受付嬢は営業スマイルで源蔵に話しかける。やはりな、と源蔵は内心で舌打ちしたが、これはある程度予想した対応だったので、こちらも落ち着いた態度を崩さずに答えた。D5原液
「ああ、その、お前の手が、随分と母さんにそっくりだったから」
「私の手が?」
「そうだ。母さんもお前みたいな、白くて奇麗な手をしていたな。小さいときは丸っこい手をしていたけど、お前も大きくなったんだなあ」
 父は私の手を感慨深げに見つめ、微笑んだ。よかった。学校でのことが、ばれてしまったわけではなかった。私も父に勘ぐられたわけではないと分かり、口元が緩む。
「お母さんもこんな手だったっけ」
「ああ、そっくりだ」
 そう言われて、改めて自分の手を見つめる。白くて、指が長い。こうして見ると確かに奇麗だと言えるかもしれない。体自体は決して痩せているとはいえないのに、指はすらりとしている。普段、自分の手を見つめる機会なんてないから、気が付かなかった。
 そうしていて、ふと、気づく。
 この手は、誰かの手に似ている。
 父は母の手に似ていると言った。けれど、そうじゃない。もっと最近、私は私の手にそっくりな手を見た。そう、もっと、最近……。
 そう、私が似ているのは、あの『手』。母に似ていると言われた私の手。白く、すらりとした手。
 私の手、そして母の手は、あの『手』にそっくりだった。

『手』が、二本に増えた。
 休み時間、いじめっ子たちから逃げ出すように教室を後にした私は、学校の裏庭で『手』を見つけた。
 プランターに植えられたチューリップに紛れて、『手』は確かに二本、生えていた。
 よくよく見るとそれは右手と左手のようで、同一人物の手に見えた。
「増えた」
 誰にともなく、ぽつりと呟く。今までは一本だけだったのに。それは確かに、人間の『両手』だった。
 手は相変わらず、ゆらゆらと揺れている。両手をゆらゆらと揺らす。その動きはまるで、こっちにおいでと手招いているようだった。
「何?」
 私は『手』のそばに、しゃがみこむ。そして、自分の手とその『手』を見比べた。
「そうなのね」
「でも、おねぇちゃんの言う通り何にもしないのはよくないよね!私、頑張って声掛けるね!」
「その意気よ!頑張りなさい」

そして、爆ぜて気化してくれるかそのまま結婚して子どもを産んで少子化を私の代わりに防いで頂戴ね

「おねぇちゃん、ありがとう!バイバイ!」
「ごきげんよう」

名前が分かれば………ね

にしてもおまじないか…懐かしいわね…

クラスの女子どもがよくはしゃいでたかしら

好きな人の名前を書いて最後まで使い切ったらその人と結ばれるとかなんか色々あったわね…

今回は、これにしようかしら?

「ただいま」
『ちゅ』

さてと、返信が来てるわね…
その前におまじないについてもう少し調べてみましょう

へぇ…色々あるのね
好きな人の誕生日と自分の誕生日分のビーズでアクセサリー作るとか

ん…これ使えそうね

よしっ、返信を見てみましょうか

[何にもしてないです。やっぱり自分から何かした方がいいのでしょうか?]

よしっ!

[そうですね…話すとかは難しそうなので…挨拶とあとおまじないはいかがでしょうか?好きな人の名前の文字数だけシャンプーを出してその人の事を考えながらシャンプーするおまじないをお勧めします!]

送信と…

返信はやっ!!
返信が早いこと
暇なのかしら?
[おまじないって少し抵抗があるのですが、これなら出来そうなのでやってみます!あと、明日その人を見たら声を掛けてみますね!]
 ……やっぱりただの欲望だ、言い訳無用。

 朝ご飯をさっさと片付け、晴れ晴れとした気分で玄関のドアを開け、小躍りするように歩いていると、

「っ!」

 何かが飛んできた!

 電柱に突き刺さっている……。未知なる脅威からの攻撃かと一瞬思ったけれど、それが何かを確認すると違うとわかった。

 かんざしだ。赤い花型の。そして紙が結え付けられている。

 攻撃ではないとわかったからといっても、どんな意図で矢文など仕込んだのかは果てしなくわからない。

 引っこ抜いて紙を広げてみる。筆ペン字で、なかなかの達筆だった。

『おはよう 浮気しないように朝から一緒に登校する』

「……そうなんだ。わーい、こんなに想われてて嬉しいなー」

 棒読みで呟いた後、乾いた笑いをしてしまった。

 また新たなキャラ変化かとも思ったけれど、素でもやりそうな気はするので、どうにもわからない。

 かんざし投擲よりは遥かに遅い速度で、百目鬼真紅は向かってきていた。その表情と行動は、凛々しくもあり、幼くもあり、独占欲があって、優しく、素直じゃなくて、とても彼女らしかった。

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