物の怪、幽霊、おばけ…
見たこと、あります?
アタシゃありまてん
でもね、40年生きてると「ありゃ…なんだったんだ?」
ありまつ。

家を追われて、野宿してた頃。
雨を避ける為、逃げ込んだ廃ビル。
事務所仕様の三階建のテナントビル。

足で割れたガラスや、がれきを退かして寝床の準備。
曇りガラスからは、ネオンの光が差し込み、外の喧噪も、聞こえる。
チラチラと、赤や青の光を頼りに、埃っぽい床に寝転がる。
たまってた疲れのせいか、すぐに眠りについた。

ジャリっ…
床に散らばったガラスを踏む音が足の先の方で聞こえた
「先輩ホームレスか?」
横になりながら、少し身構える。
ジャリっ…
ジャリっ…

近づいてくる足音。
フー…
ウー…
鼻息とも取れる音まで聞こえる。

体のバネを総動員して、飛び上がる
「誰だおるぁ!」

誰もいない…

横になりながら、耳をそばだてる。
いきなり両足首を、ガッと掴まれる感覚がする。
体が動かない。
金縛り?

一点を見つめる天井付近。
モワモワとした黒い影のようなものが漂っている。
「ヤベェ…やばくね?」
胸を押される感覚もして、不安と恐怖感が、のしかかる。

確かに聞こえた
「ぐぅぅ…あぁぁ…うぅぅ…」
それは耳元数センチの距離での、うめき声。
生暖かい吐息の感触もするくらい…
「えぇ?どーなる!おれ!」
足音の数も、相当数に増えて、ガラスやジャリを踏む音があちこちから。

ふっと体が軽くなり、飛び起きる!
相変わらず、薄くネオンの光が入る、薄汚い事務所。
誰もいない。
ただ…
空気がさっきとは、明らかに違う。
重苦しく、生臭い。

逃げ出しました。
近くの公園で、息を整え、改めて足首や、体を見ました。
なんともなってなかったけど…
来ていたシャツの背中。
床は乾いていたはずなのに、粘り気のある、真っ黒い液体で、濡れていた。
両頬にも、黒い粘った液体が…
しかも、くっさい!

公衆トイレで、顔を洗い、シャツを脱ぎ、着替える。
公園を出て行く瞬間。
肩を掴まれる、耳元で…
「ぐぅぅ…」

後日、そのビルの上の階で、二人のホームレスが餓死していたことが、わかった。
死後1ヶ月らしい。

ありゃ…なんだったんだ?
アタシゃ信じてませんよ。
おばけなんてなーいさ!
おばけなんてうーそさ!
ねーぼけーたひーとが
みまちがーえたーのさ!
朝からねー…なに書いてんだか。
な、にっき。 天天素
福源春

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