……やっぱりただの欲望だ、言い訳無用。

 朝ご飯をさっさと片付け、晴れ晴れとした気分で玄関のドアを開け、小躍りするように歩いていると、

「っ!」

 何かが飛んできた!

 電柱に突き刺さっている……。未知なる脅威からの攻撃かと一瞬思ったけれど、それが何かを確認すると違うとわかった。

 かんざしだ。赤い花型の。そして紙が結え付けられている。

 攻撃ではないとわかったからといっても、どんな意図で矢文など仕込んだのかは果てしなくわからない。

 引っこ抜いて紙を広げてみる。筆ペン字で、なかなかの達筆だった。

『おはよう 浮気しないように朝から一緒に登校する』

「……そうなんだ。わーい、こんなに想われてて嬉しいなー」

 棒読みで呟いた後、乾いた笑いをしてしまった。

 また新たなキャラ変化かとも思ったけれど、素でもやりそうな気はするので、どうにもわからない。

 かんざし投擲よりは遥かに遅い速度で、百目鬼真紅は向かってきていた。その表情と行動は、凛々しくもあり、幼くもあり、独占欲があって、優しく、素直じゃなくて、とても彼女らしかった。

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